キャリアアンカーとは、キャリアを選択するときにどうしても譲れない価値観・欲求の軸のことで、米国の組織心理学者エドガー・H・シャインが提唱した概念です。
シャインはMITスローン経営大学院で組織心理学を研究した人物で、長期にわたる卒業生の追跡調査などをもとに、人のキャリア選択には一貫した「錨(アンカー)」があることを見出しました。船が錨を下ろすとその場から大きく流されないように、人もキャリアの節目で必ずこの軸に引き戻される、という比喩です。
シャインによれば、アンカーは次の3つの要素が重なるところに形成されます。
- 能力:自分は何が得意か
- 動機:自分は本当のところ何がしたいのか
- 価値観:何をしているときに意味や意義を感じるか
この3つは、いわゆる自己分析の基本要素と重なります。ただしアンカーの特徴は、3つが重なる中でも「最後まで手放せないものは何か」を一点まで絞り込むところにあります。器用に何でもこなせる人ほど、この絞り込みをしないまま選択肢の広さに流されがちです。
転職の失敗談を聞くと、「仕事内容は希望どおりなのに、なぜか苦しい」というケースが少なくありません。厚生労働省の雇用動向調査でも、労働条件や人間関係など「環境とのミスマッチ」は転職理由の上位に挙がり続けています。年収や職種の条件は満たしていても、譲れない価値観が侵害される環境では満足度が続かないのです。あなたが過去に「もう辞めたい」と強く感じた瞬間、そこで踏みにじられていたものは何だったでしょうか。その答えのなかに、あなたのアンカーが隠れています。




